CBDが話題になるにつれ、「カンナビジオールがてんかんに効くって本当?」「効果はあっても副作用は大丈夫なの?」といった疑問を持つ人も少なくありません。
日常生活で辛いけいれんに悩まされるてんかん(癲癇)に対してカンナビジオールは効果があるのでしょうか?
医療大麻としてのカンナビジオールがてんかんにもたらすメカニズムを詳しくご紹介します。
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てんかん症状に効果をもたらすカンナビジオール(CBD)の有用性
脳内の神経細胞ネットワークは電気的に活動していますが、電気的活動に乱れが生じるとけいれんや意識障害などの発作が起こります。
この電気的活動の異常による脳の疾患がてんかん(癲癇)。
脳の傷によることもあれば、突発性で原因不明なこともあります。
アメリカではてんかん治療に医療大麻が使用される州もあるなど、昔から大麻由来の物質の抗けいれん・鎮静作用が知られています。
小児の難治性てんかん(ドラベ症候群)にも医療大麻が効果的といった報告もあります。
ところが、同じ大麻由来でもTHC(テトラヒドロカンナビノール)の使用は、子供や長期間の使用において副作用のリスク(眠気・めまい・記憶力低下)が大きなデメリットでした。
そこで注目されたのがCBD(カンナビジオール)。
CBDは、難治性で死亡率も高いドラベ症候群のてんかん発作に対しても有効性が示されています(※詳細は次章に記載)。
もちろんTHCの服用で起こる副作用と比べると、副作用も少ない傾向にあります。
また、通常の抗てんかん薬を服用すると、
- 嘔吐
- めまい
- 錯乱
- 発疹
などの症状に悩まされる可能性がぬぐえません。
そこでCBDを併用することによって従来の抗てんかん薬の量を減らせるため、結果的に副作用を軽減できる点もポイントです。
つまり、CBDは医療大麻として期待できる抗てんかん作用を持ちつつ、副作用が少ないため有用性の高い物質と言えます。
小児てんかん(ドラベ症候群)に対するカンナビジオール投与の研究結果
ニューヨーク大学ランゴーン総合てんかんセンターやアメリカの小児病院等所属の研究グループによる研究です。
1日あたり体重1キログラムあたり20mgのカンナビジオール経口液(またはプラセボ)を投与し、14週間にわたってけいれん発作の頻度を測っています。
アメリカとヨーロッパの計23のセンターで行われ、てんかん患者108人が試験を完了しました。
月あたりの痙攣発作の頻度の中央値は、プラセボでの14.9から14.1への減少と比較して、カンナビジオールで12.4から5.9に減少しました。けいれん発作の頻度が少なくとも50%減少した患者の割合は、カンナビジオールで43%、プラセボで27%でした。
(中略)
すべてのタイプの総発作の頻度は、カンナビジオールで大幅に減少しました。
引用:www.nejm.org
すべての種類のてんかん発作頻度が減った結果には驚きです。
また、日本生科学会のウェブサイトには以下の内容が記載されています。
GPR55のアンタゴニストのカンナビジオールはてんかん発作や自閉症を低減させることがわかった44).Dravet症候群は乳幼児期に発症する難治性のてんかんで,そのマウスモデルを用いて,カンナビジオールの投与がてんかん発作を低減させることを示した.
やはりCBDのてんかん発作に対する有用性はさまざまな研究結果で示されています。
全世界・大規模ではないにせよ、他にもカンナビジオールがてんかんの症状を緩和させた事例はいくつも確認できます。
このように、医療大麻の有用性に着目する専門家や医師がカンナビジオールに期待を寄せているのが現状です。
CBD(カンナビジオール)使用による副作用はゼロではない
前項の研究では、てんかんによるけいれん発作頻度はCBD投与によって減少しました。
しかし、下記の有害事象も報告されています。
両方のグループで、有害事象の最初の発生は、14日間の用量漸増中に最も一般的に報告されました。カンナビジオール群の一般的な有害事象(頻度が10%を超える)は、嘔吐、疲労、発熱、上気道感染、食欲減退、痙攣、嗜眠、傾眠、および下痢。
(中略)
この試験は、カンナビジオールが14週間にわたってドラベ症候群の小児および若年成人のけいれん発作の頻度を低下させたが、傾眠および肝臓酵素レベルの上昇を含む有害事象と関連していたことを示した。
引用:www.nejm.org
被験者のうち10%にあたる12人が試験完了前に中止しています(その内プラセボ群で3人)。
中止した人の割合が高いとは言えませんが、やはり副作用がゼロというわけではありません。
CBDのてんかんに対する効果には期待を持ちつつも、有害事象には注意が必要です。
CBD(カンナビジオール)の抗てんかん作用メカニズム
実はCBDの抗てんかん作用は、特定の作用機序で説明することができません。
カンナビジオールはカンナビノイド受容体(CB1、CB2)にほとんど作用しないのが特徴のひとつ(※THCは受容体に働きかけます)。
CBDは受容体と関係のないところで、
- 神経細胞の興奮をコントロールする
- けいれん抑制作用を持つアデノシンの濃度を高める
といった働きをすることが報告されています。
この他にもさらに多くの作用機序があり、いくつもの作用が総合的に働いて抗てんかんにつながっていると考えられています。
珍しいほど多くの作用機序が重なることで、
- 痛み
- ガン
- 炎症
などに対する効果にも関係していると言われています。
CBD(カンナビジオール)は神経ダメージも守る?
CBDは抗けいれん作用だけでなく、
- 「抗不安作用」
- 「抗うつ作用」
- 「制吐作用」
- 「抗精神病作用」
- 「抗炎症作用」
- 「抗酸化作用」
といった作用の有意性も報告されています。
CBDは“ハイになる”などの精神作用を持たないため、不安やうつに対しての症状改善も期待できます。
さらに「抗炎症作用」や「抗酸化作用」は神経細胞を守る働きがあり、神経変性疾患の症状改善効果にも注目が集まっています。
CBDの使用は抗てんかんに期待が持てる
CBDのてんかんに対する効果や研究についてご紹介してきました。
今までの抗てんかん薬による治療に比べ、多くの可能性を秘めているカンナビジオール。
てんかんの症状に悩む方にとっては希望の光になるかもしれません。
CBDが持つ抗てんかん作用だけでなく、デメリットも理解した上で情報を収集しましょう。